26: 一の矢二の矢とんで四の矢

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比丘たちよ

まだわたしの教法を聞かないひとたちは、苦受にふれられると

憂え、疲れ、悲しみ、胸を搏って泣き、なすところを知らず

彼らは二種の受を感ずる

見に属する受と、心に属する受である

比丘たちよ

たとえば、第一の矢をもって射られども、さらに第二の矢をもって射られるがごとし

それとおなじく、比丘たちよ

すでにわたしの教法を聞いた弟子たちは

苦受にふれられるども、憂えす、疲れず、悲しまず、胸を搏ちて泣かず、

なすところを知らざるに至らず

 

(雑阿含経『箭経』第十七)

 

胸を貫いた一の矢は彼方へ消えていったはずなのですが、この胸に刺さったままで残る矢を一の矢の残像だと思っていたのは間違いだったようです. 二の矢は鈍った頭にゆっくりと毒を忍ばせて、気づいたらわたしの目を曇らせていました. 土曜の雨の日の雲を映し続けていた目に、あたたかい梅雨がきて「晴れ」たのはほんの少し前のことでした. 濡れた足元に滴る水はどうやら胸と四の矢の境目からのようです.

 

ある有識者や科学者たちの対談を拝聴したときに、「戦後の心労が重なった兵士たちが国へ帰るときに乗るのは船だったんです、それはほかの交通手段よりも長い時間を移動に費やす=こころを癒す時間の確保という理由もあるんですよ」と. ふと、休みの日になると単車にまたがって何時間も休憩を取らずに走り続けていたのは、これも「こころを癒す時間の確保」を無意識に行っていたのかもしれないな、と.

 

迷わずこの矢を、抜かねば.

25: deadline of emotions

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今も抱き続ける 胸の傷み 想い出が香るこの場所から

誰もない向かいの席 いつまでも 僕は独りで あなたを待ち続けてる

アンジュナ / The Gospellers

 

2年以上の時が過ぎようとしているこの着信履歴を消せないのは、年月とともに薄れていく"想い出の残り香"を偲んでいるからなのでしょうか. それとも未だ癒えず、ゆるやかに痕になってゆくこの傷口が痛むからなのでしょうか. わたしにもわからないのです. ただここにあるものといえば、液晶画面に映る日付と電話の発信者の名前だけ.

 

感情の期限、それを決められずに目の前でくすぶり、時には燃えて...

 

思い返す度浮き彫りになる過去に抱いた感情、それらとともにわたしはいつまでもあの人を待ち続けてしまう. それはこの感情の期限を過ぎるということが、まるであの人が"死んでしまう"ような気がするからかもしれません. 

24: 梅の花は零れて

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わたしは大きなくくりの中でいうとサービス業に従事しています.
どの職業に従事していても人間関係というものはつきもので、人と人が一つの会社という屋根の下で生活をしているわけですから、喜びあれば悲しみや怒りも常にあるものです.

 

"会社のため"と働きますが、たまに"会社のため?"と思うようなことも当然あります.

冬のからりと乾いた空の眩しい笑顔をみると、硬い地中にもぐり続けて暗がりに向き合う毎日(実際に言えば明るい画面をみる毎日)ばかりで、いざ土から出て空を仰いだら眩しすぎる空に目を細めるしかなくなってしまうのではないか、と思ってしまいます.

「サーカス団長とライオン」「トレーナーとイルカ」と聴いて、もし弟子入りするならば...どちらも指導する側とされる側の名前が羅列されているだけなのですが、なんだかサーカス団長はいじわるで怖いイメージがわいてしまうのはわたしだけでしょうか.

 

"人を笑顔にする仕事"はやりがいがあるはずなのですが、働く環境がそれをすこしばかり難しくさせている. 少し前まで、わたしがその状態にありました.

 

でも、綺麗事をいっても野口英世樋口一葉、ましてや福沢諭吉の書いてある紙は働かなければ手にすることはできません.

同僚の無慈悲な一言に胸を撃ち抜かれても、いつかの同僚が助けれくれた恩を思い出しては包帯を巻いて... 上司の理不尽な指示に顔がしかめっ面になっても、部下から頼られれば芽を伸ばせるように応援をして(まるで自分を応援するかのように)...

 

会社という屋根の下で息苦しくなったら、この家の扉を開けて歩き出してみればいいのだ.とようやく最近思えるようになってきたのは、わたしよりも困難な状況下で地中をもぐりながらも、そのような最中ですら、わたしを気にかけてくれた友人の背中をみたこと. 街でささいなきっかけから言葉を交わし、その人の歩いてきた過去の一ページを話して下さった方の言葉からの気づきなど...

 

明日も「また仕事か~」といいながら出勤するでしょう.

でも以前よりは窓越しの冬空を目に映せるようになった、そんな気がしています.