02:26型と27型

簡潔にいえば、9年間一緒に走った自転車が直せないほど壊れてしまって、新しい自転車をつい先日迎え入れた.という話です.

高校入学式の迫った2月頃だったでしょうか、母に連れられてやってきた町の自転車屋さん.

"高校生になるんだから、新しい生活には新しいものを買うの"と、小学生になる子供に赤や黒のランドセルを買うように、母は一台の自転車を買ってくれました.

この自転車屋さんは藤岡弘、似のせがれさんと、のっぽでのんびりなおじいさんがこじんまりとやっているお店で選んだものです.

長く使う・一緒にいるものを決める、ということはわたしにはとても時間がかかることで、それは自転車にかかわらず何にしても、悩んで悩みぬいてからでないと買えない性分.

悩んでしまってなかなか決まらないわたしに、のっぽののんびりおじいさんが「これが一番だよ」とすすめてくれた自転車が、まさか高校生から社会人になったこの年まで一緒に過ごすことになるとは、考えてもみませんでした.

 

時が流れ、高校生から大学生へ、そして社会人になった数年前のこと、忽然と自転車屋さんが消えてしまったのです.

"ああ、また好きなお店がなくなってしまった"、"もしこの自転車が壊れたらどこに直しに行けばいいのだろう"と思ってはいたのですが...

そんな自転車が5月13日の金曜日、そう不吉な日の夜、仕事場からの帰り道に"がたん"と音を立てて、走ると苦しそうに音を立てるようになりました.

あの自転車屋さんがない以上、仕方ないと他の自転車屋さんに修理の見積もりを依頼するも、返ってきた言葉は"修理費の方が高くなってしまうので、もう新しいものを買われた方が..."というものでした.

"新しいものを買う"という一大事がやってきてしまった! こんな時にあの自転車屋さんがあったら...と、いろいろな自転車屋さんに出向くも、買えないで帰ってきてしまう日々が続きました. (本当に、優柔不断なわたしです)

 

しかしながら、タイミング、というのは本当にあるもので、なくなったと思っていた自転車屋さんを偶然にもみつけることができたのです.

普通の人ならばきっと、自転車のような生活必需品ともなれば、お店がどうのということは二の次で、新しい自転車を買うのでしょうし、自転車屋さんのおじいさんと再会できたことを喜ぶようなことはしないでしょう.

 

おじいさんはあの時のように親身になって一緒に自転車を選んでくれ、また世間話もしました.

わたしが高校生の時に訪れたお店は、現在せがれさんが引き継いで別の県の移転先で営業しており、お年を召したおじいさんはひとり気楽に自転車を売ることにしたそうです.

(わたしが訪れた時には眠っていました)

 

二人で決めた(というかおじいさんの"これが一番だよ"の一言)、27型の自転車.

つい最近27才になったわたしですが、この自転車とはまた長い付き合いになりそうです.